チェロの響き

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弦の奏でる音が好きだ。
小さい頃から、特にチェロの音色が好きだった。
いつかチェロを弾いてみたいと思っていた。

実際にチェロに触れたのは、今から10年ほど前のことだ。
ピアノをやる友人の家に遊びに行った時、部屋の隅に立てかけてあったのを触らせてもらったのが最初だった。
まず、その形状を間近に見、心を奪われた。
チェロのフォルムはとても美しい。
木の温もりのある膨らみ、くびれ。
あの音を出すために到達した完成されたかたち。
友人の手取り足取りの指導で実際に音を出してみて、魂が震えるような感動があった。
ずっと好きだったあの音が自分の胸元で鳴っている、そう思っただけで泣き出してしまいそうだった。
シチュエーションも良かった。夕陽が部屋を蜂蜜色に染め、その中で、あの濃厚な音色が響くのだ。まるで映画のワンシーンのようだった(言い過ぎかもしれません)。

それから数年して、自分のチェロを手に入れた。しかし、私が住んでいる所は壁も床も相当に薄いので、しっかりとした音を出すことができない。
小心者の私は、ミュート(消音器)をつけて、なおかつひっそりと弓を滑らすように弾いてしまう。才能が無いのに加え、こんな状況ではいつまで経ってもうまくなるはずがない。

音を気兼ねなく出せるところに引越したくてたまらない今日この頃。

The Old Man and The Sea

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実家のすぐ近くに、それほど大きくはない3軒の本屋があった。
ひとつは新旧問わず文庫を充実させ、ひとつは新刊に肩をいれ、ひとつは雑誌類を多く扱っている。そんなふうにして差別化をはかっていたように思う。
小学生の頃、学校が終わると、毎日のようにそれらの本屋に寄ってから家に帰った。
友達と野球やサッカーをして、へとへとになっても足を運んだ。
少ない小遣いのほとんどを本に費やした。
一番最初に自分のお金で買った本はヘミングウェイの「老人と海」だった(釣りが好きでしたし、なにより薄くて安かったのです。覚えていますが160円でした)。
何度もくり返し読んだ。
カバーは背中の上下からぼろぼろになっていった。
ところどころに、お菓子の滓が小さな油のシミをつくった。
ページもしわくちゃになって、厚みが2倍くらいになった。
そんな姿になっても、高校を卒業するまで、ずっと部屋の本棚に置いていた。
大学で実家を離れ、部屋は弟に占拠された。
私の大量の蔵書は弟に引き継がれた。
弟もこの160円の「老人と海」を何度も読んだらしい。

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活字中毒

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自他ともに認める重度の活字中毒だ。
一人で電車に乗るときは、たとえ一駅区間だろうが、必ず本を2、3冊持って乗る。
しかし、数年に一度の割合で、バッグに入れたつもりが入っていなかったという非常事態に遭遇する。
それに気がついたときの衝撃は、はかり知れないものがある。目の前が真っ暗になる。
電車に乗っている時間が短ければ、中吊り広告の文字に目を走らせ、脳をごまかすといった緊急避難でその場をしのぐ。本当に仕方なくそれでしのぐ。
しかし、東横線・横浜ー渋谷間(よく利用するのです)のような、ちょっと長めの乗車になると、電車内代用作戦だけではすぐに玉が尽きてしまう。
玉が尽きた途端、背中を冷たい汗が流れる。手が震えるなんてこともあったかもしれない。ぶつぶつと自分に呪いの言葉を吐くなんてことも、もしかしたらあったかもしれない。
今はiPod miniという、とても気の利いた友人が傍にいるので、本を忘れたとしても大丈夫だとは思うのだが、果たしてどうだろう。だからといって本をわざと持たずに電車に乗る勇気は私にはない。

展覧会を開催したい方に。

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今日が展覧会の最終日でした。
良い天気に恵まれて、たくさんの方に来場していただきました。この場を借りてお礼を申し上げます。本当にありがとうございました。
ギャラリー・ツープラスの加藤様、一週間お世話になりました。会期中、とても気持ちよく過ごすことができました。ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。

拙展を開いたこのギャラリー・ツープラスは、300から400あるといわれる銀座のギャラリーの中でも、びっくりするほどリーズナブルです。2階、3階とツーフロア使用することができ、多数の作品を展示することができます。
銀座は高いから、という理由で二の足を踏んでらっしゃる方がいたらおすすめします。
http://tentaikansokusya.com/
です。一度覗いてみて下さい。

歳をとるということ

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やはり、昨日も今日も雨が降った。
せめて展覧会の最終日は天気に恵まれてほしいと思う。
昨日、会場に大学時代の友人が来た。彼は毎回訪れてくれ、その後飲みに行くのがオキマリのコースとなっている。
大学を卒業して何年間は隔週ぐらいで会っていたが、彼に子供ができると、なかなかそうもいかなくなり、飲みに行くのは新年会と私の展覧会のときぐらいになってしまった。
新年会は他の仲間もいるので様々な話で盛り上がるが、彼とサシで飲みに行くと必ず、大学時代にやったテニスコーチの話に花が咲く。
いつも同じ話題で、いつも同じところで笑って、いつも同じようなところで話が終わる。
お互いに、そのほとんど儀式化した行為をすることで、心の中にあるわだかまりだとか、ストレスだとかをうまい具合に昇華しているのだと思う。
あぁ、歳とったなぁと思う。

STYLEPLUS と雨の展覧会

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今作のスタイルプラス「MASURAO」を持っている人を見かけるのはいったいいつになるだろう。
来週あたりから、もう出回ってもいい頃合いだなどと思って、街中で携帯を使っている人が気になって仕方がなくなるんだろうと思う。
MASURAOを使っている人を見つけてしまった時の行動の流れを考えてみた。
1・笑顔を浮かべる
2・無言で近寄る
3・いきなり手をとって握手する
4・肩をたたく
5・抱きしめる
6・頭の上で大きく手を振って別れる
相手はなんのことか解らず、気味悪がったり、怒ったりするだろうが、そんな事は気にしない。確実にこの6項目を遂行しようと思う。
もちろん一度も遭遇しないまま、ひっそりと絶滅していくというパターンもあるだろう。これはこれでひとつの美学だ。

銀座での個展、今日が4日目。
また雨が降った。今週末も崩れるらしい。
私が展覧会を開くと、決まって雨が降る。それもかなりの割合で会期の間中降る。
5年前は信じられないことに初夏に雹が降った。

今展は、前回までの技法を継承した、文字を彩ることで、その背後にある情景を視覚的に表現した作品と、今回のテーマである、文字や言葉を介在させずに線と明暗で、純粋精神を表現した一連の作品のふたつの構成で成り立っている。

展覧会を開く楽しみのひとつとして、それまでまったく知らなかった人と出会えるというのがある。間に作品が媒体としてあるので、親しくなるのにそう時間はかからない。作品とはいわば、自分の心がそのまま投影された物だ。その作品に興味を持って来てくれるのだから、知己のような感じがある。
とても有り難いことに、初回の展覧会から今回まで欠かさず来場して下さってる方がいる。私のすべてを知っているようで少し怖い。

個性溢れるSTYLEPLUS

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blogの初稿を見て下さった、たくさんの方々、ありがとうございました。
こんなに閲覧されるとは思っていませんでした。心配はまったくの杞憂となっています。
また、たいへん嬉しいコメントを頂けて、舞い上がってもいます。

10 Creators の他の方々の作品を拝見して、個性溢れる、とても素敵なものばかりだなと思った。多数の応募作品の中から選ばれたものだけあるな、と。
私はFOMAではないが、同じコンペを勝ち抜いた戦友の作品として、全種類購入し、記念にしようかなと思っている。
この10人のアーティストのうち、FOMA700iの方はどのくらいいるんだろう。少し気になる。

私は気に入った物に出会うと衝動買いに走る傾向がある。
運命を感じるような物との出会いはそう多くはないが、ひとたび恋に落ちてしまったら、大人として恥ずかしい額しか財布の中に入っていないのにも関わらず、そういうことになってしまう。
何故なんだろうとふと考えてみる。でも、衝動だから認知できる理由はない。

ギャラリーを巡り歩くのが好きだ。
友人の展覧会はもちろんのこと、銀座をぶらぶらして、手当たり次第にギャラリーへの突入を試みる。雑誌で気になる作家のイベントを見つけたら多少遠くても足を運ぶようにしている。
会場で、手頃な価格の小品が艶っぽい視線を送ってくると、上記の衝動が起こる。もう離ればなれにはなれない!と思う(なんか、こういうCMありましたよね。あっちはチワワでしたけれど)。

アーティストがそれぞれ創った作品は、それが絵であれ、陶器であれ、とても小さなオブジェのようなものであれ、しっかりとした血が通っている。
ひとつとして同じものが無いオリジナルであれば尚更だ。

写真は、部屋の片隅で光を放つ、大好きな川村忠晴さんの作品。