プルースト効果

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「それ」をかぐと、それにまつわる極めて印象的な情景が見事にフラッシュバックされるという、自分にとって特別な匂いがいくつかある。
マルセル・プルーストの小説「失われた時を求めて」の第1巻に、主人公が紅茶に浸したマドレーヌを口にした瞬間、昔の記憶を取り戻すという有名なシーンがある。そこからこの現象はプルースト効果と名付けられたらしい。

私にとってのその特別な匂いは、その辺に日常的に存在するものもあれば、なかなか普段はお目にかかれないものもある。
そして、それらはすべて共通する現象を引き起こす。
手垢にまみれた表現で申し訳ないが、「胸がきゅんとする」のだ。「きゅううん」とちょっと長めになるときもある。
思いがけないところで、ふとその匂いが漂ってくると、脳裏にその思い出のシーンのカットが何百枚も何千枚も一瞬のうちに流れる。その場にしゃがみこんでしまいたくなるぐらいのすさまじい量だ。
しばらくの間、その膨大な映像を自分なりに消化し、余韻に浸る。
隣に誰かがいても、しれっとした顔でそうする。

なぜか悪い記憶を喚起する匂いというものはない。
たぶん、厭な状況に身を置いているときというのは、嗅覚など無意識にシャットアウトしているからか、それを感じる心の余裕がないからなのだろう。

香りや匂いを楽しむ心の余裕はいつも持っていたいと思う。

「失われた時を求めて」は10年以上かけて、まだ5巻の途中。
遅々として進まず、いつも途中で他の気になる本に乗り換えてしまう。
次に手をつけるときはストーリーなんかほとんど忘れているので、また1巻からぱらぱらとページを繰って思い出さなければならないし、探すのも面倒くさい。
3歩進んで2歩下がる的読書である。
「源氏物語」もそうだ。
死ぬまでに読破できるのだろうか・・・。

プルースト効果」への6件のフィードバック

  1. 私はこの時期の湿気とアスファルトの匂いに、胸がぎぃ~っとなります。
    いつの記憶だかわかりませんが、何かが始まりそうな予感と不安のようなものが入り混じった感覚が呼び起こされます。
    こう頬が高揚する感じですね。中学生くらいかな。中間テストかな。

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  2. 匂いの記憶って、最近すごく考えていたことです。
    ある記憶のどこかにしまいこんだ匂いと偶然出くわすと、本当に膨大な情景が溢れかえってきますね。
    匂いの記憶って、よみがえってくるとほんと余韻が長いですね。
    それは、街中でふと匂ってくる香水の匂いに、古き良き日々の中での女性とのことを思い出したり、田舎に帰ると、畑の匂いに子供のころの古き良き日々のいろんな記憶がよみがえってくることなどがあります。
    悪い記憶を呼び起こす匂いはあることはありますが、余韻に浸りたくもないから、すぐさま忘れるモードに入りますね(笑)
    僕は「共感覚」という言葉が好きで、大学の時に杉浦康平氏の授業で習った言葉で、一つの感覚から受けたモノが他の感覚にも伝わって、すべてに広がっていって共感するといった意味で、匂いで嗅覚を刺激されて、すべての感覚に広がっていって、時間軸も超えていろんな情景を投射したといえるかもしれませんね。
    日常生活では、共感覚が常に普通のように行われてると思えばおもしろいかもですね。

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  3. なつみさま
    こんにちは。
    私も、この季節の雨が降り始めた直後のアスファルトの匂いには変に郷愁を誘われます。

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  4. Tさま
    こんにちは。
    以前、「響」をテーマにした作品展を開いたときに、ある方から
    「君は共感覚を持っているんだね」
    と言われたことがあります。
    その方からいろいろとお話をお伺いして、とても興味をもちました。
    おもしろいですよね、共感覚って。

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  5. KOYさんも共感覚を知っていたんですね。
    ほんと、おもしろいですよね。
    共感覚を感じるデザインやアートは素晴らしいと思います。
    KOYさんの作品はある方と同じ意見で共感覚を感じると思いますよ。「響」という作品をポートフォリオで観ましたが、観ていて音が聴こえてきそうでした。
    以前、僕も大学の卒業制作で自分の音楽を視覚化するようなことをしましたが、中途半端な感じに終わってしまったことがあります。書道というのは、すごい音楽的だなぁってKOYさんの作品を観てて感じてます。最近思いますが、日本文化は他の国に比べて共感覚を感じることが多いかもしれないと感じてます。

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  6. Tさま
    作品を観て下さってありがとうございます。
    他国の文化に私はあまり詳らかではないのでよくわかりませんが、大胆さと繊細さを兼ね備えた日本の芸術(文化)というのは、Tさんの言うとおり、他の感覚に影響を及ぼしやすい面があるかもしれませんね。

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